はじめに
前回の第3話では、Claude APIと初めて接続した話と、CEOがロシア語を話した話を書いた。
今回は、VCSの開発で最も「これだ」と感じた瞬間の話だ。
Human-in-the-loop。
人間が一行の指示を入れると、AIの会社全体が動き方を変える。その瞬間の話だ。
Human-in-the-loopとは何か
VCSのコンセプトのひとつに、「AIが自律的に動きながら、人間が介入できる」という設計がある。
完全自動化ではない。AIに全部任せるのではなく、人間がオーナーとして方針を決め、AIたちがその方針に沿って動く。
これを「Human-in-the-loop」と呼んでいる。
ループの中に人間がいる、という意味だ。
実装:たった一行の追加
技術的な実装はシンプルだった。
CEOへの指示に、人間からのメッセージを追加するだけだ。
function ceoAgent(cfoReport, ctoReport, cmoReport, humanInstruction) {
const system = `あなたはスタートアップのCEOです。
オーナーからの指示を最優先にしながら、
各部門への指示を300文字以内でまとめてください。`;
const userMessage = `
【オーナーからの指示】
${humanInstruction}
【CFO報告】${cfoReport}
【CTO報告】${ctoReport}
【CMO報告】${cmoReport}
上記を踏まえて【CEO判断】を示してください。`;
return callClaude(system, userMessage);
}
コードの変更は数行だけ。でも、効果は劇的だった。
実験1:資金調達モード
テキストボックスにこう入力した。
来月の資金調達に向けて、数字を整えてください。
ボタンを押した。4エージェントが動いた。
CEOの判断はこうだった。
【CEO判断】
CFOへ:純利益240万円の継続性を数字で示せる資料を
優先作成してください。広告費超過は投資対効果の観点で
整理し、「戦略的投資」として説明できる形に落とし込んで
ください。来週月曜までに投資家向けサマリーを提出のこと。
CTOへ:API完成80%・セキュリティ監査実施中という事実は、
投資家に対して「品質重視の開発体制」として強みになります。
遅延ではなくリスク管理の証左として資料化してください。
CMOへ:フォロワー+500・CTR2.3%は投資家訴求に使える
数字です。新キャンペーン案のMTGを前倒しし、数値目標付きの
成長ロードマップを作成してください。
会社全体が、資金調達に向けて一斉に動いた。
実験2:コスト削減モード
次に、真逆の指示を入れた。
コスト削減を最優先にしてください。
新規投資は全て凍結する方向で判断してください。
CEOの判断が、180度変わった。
【CEO判断】
CFOへ:広告費超過を最優先課題として、来週中にROI分析を
実施し、効果の低い施策を即時停止してください。
新規支出の申請は全て私の承認を必要とします。
CTOへ:セキュリティ監査は継続しますが、それ以外の
新規開発投資は一時凍結します。現行機能の安定化を優先。
CMOへ:新キャンペーン案は保留。現在の施策のROI改善を
優先してください。追加予算の申請は受け付けません。
同じ会社、同じメンバー、同じ状況。
人間の指示が変わっただけで、会社の動き方が全く変わった。
この瞬間に感じたこと
この実験をした時、VCSが何のためのツールなのかが、初めてクリアになった気がした。
スタートアップの創業者が「もし自分がこういう方針を取ったら、会社はどう動くか」を試せる。コンサルタントが「この企業にこういう指示を出したら、各部門はどう反応するか」をシミュレートできる。
あるいは、ゲームとして。プレイヤーが毎ターン一行の指示を入れて、会社を成長させる。
Human-in-the-loopは、VCSの核心だった。
WebUIの完成
この機能をブラウザから使えるようにしたくなった。
GASにHTMLファイルを追加して、WebアプリとしてデプロイするとURLが発行される。そのURLをブラウザで開くと、テキストボックスとボタンが表示される。
指示を入力して「シミュレーション開始」を押す。しばらくすると、4エージェントの報告と判断が画面に流れてくる。
CFO エージェント [財務報告]
今週の財務報告:売上420万円/支出180万円...
CTO エージェント [技術報告]
API開発は順調に進捗し...
CMO エージェント [マーケ報告]
SNSフォロワーが500人増加し...
CEO エージェント [意思決定]
【CEO判断】財務・技術・マーケ、各部門お疲れ様です...
コードを見なくていい。GASを知らなくていい。ブラウザから操作できる。
今日時点での全体像
現在のVCSはこういう構成になっている。
[ブラウザ(WebUI)]
↓ 指示を入力
[GAS WebApp]
↓ 各エージェントを呼び出す
[Claude API × 4]
CFO → CTO → CMO → CEO
↓ 結果を返す
[スプレッドシート(ログ)]
シンプルだ。でも動く。
次回予告
第5話では、ワイヤーフレームの話を書く。
ダッシュボード、エージェント設定画面、シミュレーション実行画面の3画面をHTMLで作った。
特にシミュレーション実行画面は、CEOが「Claude APIが応答を生成中…」とアニメーションする演出が入っている。
→ note版(ショート)はこちら
→ 前回【第3話】:CEOがロシア語を話した日
→ 次回【第5話】:画面を作った話
Virtual Company Studio 開発日誌 #4
2026年2月
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