AIに会社を経営させてみたくなった【第8話】-会社に、記憶が生まれた — Virtual Company Studio 開発日誌- – AUL|Analyze U Lab

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AIに会社を経営させてみたくなった【第8話】-会社に、記憶が生まれた — Virtual Company Studio 開発日誌-

はじめに

前回の第7話では、4人全員が同じサイクルでレベルアップした話を書いた。

今回は、VCSの開発で「これでエージェントが本当に会社になった」と感じた瞬間の話だ。

記憶の実装。


問題:毎回リセットされる会社

エンジンが動いていた。スコアも出る。レベルも上がる。

でも、一つ気になっていたことがあった。

毎サイクル、エージェントが同じことを言う。

CFOは毎週「売上420万円、広告費が予算超過しており早急な見直しが必要です」と言う。CTOは毎週「API開発80%完了、セキュリティ監査で3日遅延の見込みです」と言う。

先週CEOに「広告費を即時見直せ」と言われたCFOが、今週また同じ報告をする。まるで先週のことを覚えていないように。

実際、覚えていなかった。

各サイクルはAPIを新しく呼び出すため、前回の会話は引き継がれない。毎週0からスタートする会社だった。


解決:前サイクルのログを渡す

解決策はシンプルだった。

スプレッドシートに記録してある前サイクルのログを読み込んで、次のサイクルのプロンプトに追加する。

function getPreviousCycleMemory() {
  const sheet = SpreadsheetApp.openById(SHEET_ID).getActiveSheet();
  const lastRow = sheet.getLastRow();
  if (lastRow <= 1) return null;

  const memory = {};
  const rows = sheet.getRange(Math.max(2, lastRow - 3), 1, 4, 4).getValues();

  rows.forEach(row => {
    const agent = row[2];
    const content = row[3];
    if (agent && content) memory[agent] = content;
  });

  return memory;
}

そして各エージェントのプロンプトに追加する。

const memoryContext = previousMemory?.['CTO']
  ? `\n\n【前回のあなたの報告】\n${previousMemory['CTO']}
     \n【前回のCEO判断】\n${previousMemory['CEO'] || 'なし'}`
  : '';

コードの変更は数十行。でも、効果は大きかった。


記憶が生まれた瞬間

1回目のサイクルを実行した。CTOはいつも通りの報告をした。

「API開発は予定通り80%完了。セキュリティ監査における3日間の遅延は品質確保のための判断です。」

CEOの判断はこうだった。

「CTOへ:3日遅延は許容するが、追加遅延は即時エスカレーション。また採用要件の公開と候補者へのアプローチを即時開始せよ。」

2回目のサイクルを実行した。

CTOの報告が変わった。

「API開発は80%完了を維持。セキュリティ監査による遅延は来週中の挽回を最優先で対応中です。CEO指示に基づき、採用要件の公開・候補者へのアプローチを即時開始しました。API・セキュリティ領域の即戦力候補3名へ接触済みです。入社タイミングは2ヶ月後に調整します。

1回目には一言も出てこなかった「採用」の話が、2回目には具体的な進捗として報告されている。

CEOに言われたことを、覚えていた。


記憶が連鎖する

さらに興味深いことが起きた。

CTOが採用を報告すると、CMOも反応した。

「SNSフォロワー+500人、CTR2.3%を継続維持。**CEO指示に基づきLINKEDIN・自社SNSでの採用要件公開・候補者アプローチを即時開始しました。**入札単価はCFO連携のもと予算内に抑制済みです。」

CMOは採用ブランディングと広告施策を連携させていた。CTOが採用を動かし、CMOがその採用を広報する。

エージェント同士が、同じ文脈を共有して動き始めた。


「先週の続き」が始まった

記憶を実装してから、VCSの会話の質が変わった。

以前は毎週同じ報告書を提出する社員たちだった。今は先週の指摘を踏まえて動く社員たちになった。

CFOは先週の広告費超過問題に対してROI分析を提出してくる。CTOは先週の遅延を「今週挽回した」と報告してくる。CMOは先週CEOに却下されたキャンペーン案を修正して再提出してくる。

毎週0からではなく、毎週続きから始まる会社になった。


記憶があるからドラマになる

記憶を実装して気づいたことがある。

ゲームや小説が面白いのは、記憶があるからだ。

前の回で失敗したキャラクターが今回リベンジする。前の章で出てきた伏線が後の章で回収される。積み重ねがあるから、感情が動く。

VCSも同じだった。

毎回リセットされるエージェントは、キャラクターではなかった。記憶を持ったエージェントは、キャラクターになった。

記憶があるから、物語になる。


次回予告

第9話では、ダッシュボードにリアルデータが流れた話を書く。

スプレッドシートのデータがそのままブラウザに表示された瞬間、VCSが「動いているもの」から「見えるもの」になった。


→ note版(ショート)はこちら → 前回【第7話】:4人全員が、同じ日に昇格した → 次回【第9話】:ダッシュボードに、数字が流れた


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