AIに会社を経営させてみたくなった【第7話】-4人全員が、同じ日に昇格した — Virtual Company Studio 開発日誌- – AUL|Analyze U Lab

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AIに会社を経営させてみたくなった【第7話】-4人全員が、同じ日に昇格した — Virtual Company Studio 開発日誌-

はじめに

前回の第6話では、採点エージェントを追加した話を書いた。AIがAIを評価する。忖度なし、内容で判断する。

今回は、その採点の積み重ねがある日突然「形」になった話だ。


レベルアップの設計思想

VCSに採点機能を追加した時、スコアを「記録するだけ」で終わらせたくなかった。

数字が積み上がっていくなら、何かが変わる感覚が欲しかった。ゲームで言えば経験値。会社で言えば昇進。

そこでレベルシステムを設計した。

レベル称号必要累積スコア
Lv.1ルーキー0pt〜
Lv.2アソシエイト200pt〜
Lv.3マネージャー400pt〜
Lv.4ディレクター700pt〜
Lv.5エグゼクティブ1000pt〜

実装はシンプルだ。サイクルの前後で累積スコアを比較して、レベルが上がっていたらログに記録する。

function checkLevelUp(prevTotals, newTotals) {
  const agents = ['cfo', 'cto', 'cmo', 'ceo'];
  const levelUps = [];

  agents.forEach(agent => {
    const prevLevel = getLevel(prevTotals[agent]);
    const newLevel  = getLevel(newTotals[agent]);
    if (newLevel.level > prevLevel.level) {
      levelUps.push({
        agent: agent.toUpperCase(),
        from: prevLevel.title,
        to: newLevel.title,
        total: newTotals[agent]
      });
    }
  });

  return levelUps;
}

コードは30行以下。でも、このシンプルさが功を奏した。


メディア掲載イベントの日

数サイクルを回していたある日、ランダムイベントで「メディア掲載」が発生した。

🎲 大手メディアに取り上げられました。CMOはこの機会を最大限に活用する施策を提案してください。

各エージェントが反応した。

CFOは問い合わせ増加を見越してCS対応の予備費を確保するよう提言。広告費超過の課題も引き続き指摘した。

CTOはメディア露出のタイミングを逃さないためリリースの前倒しを検討すると報告。ただしセキュリティ監査は品質優先で継続。

CMOは既存のフォロワー増加トレンドとメディア掲載を組み合わせ、新キャンペーンの前倒しを即時提案。LINKEDIN・自社SNSを主軸にコストを抑えた施策を立案した。

CEOは三部門の報告を受け、メディア露出を「即座に戦略へ落とし込んだ」と採点エージェントに評された。各部門へ具体的な期限付きの指示を出した点も高評価だった。

採点結果:

CFO: 78点(累積238pt)
CTO: 82点(累積239pt)
CMO: 71点(累積216pt)
CEO: 85点(累積261pt)

コメント:CEOはメディア露出機会を即座に戦略へ落とし込んだ
判断力が光る。CTOのリリース前倒し検討も状況判断として適切。
CMOはKPIは堅調だが、新キャンペーンの具体性が惜しい。

そしてサイクルの最後。ログに4行が並んだ。

🎉 CFO:ルーキー → アソシエイト(累積238pt)
🎉 CTO:ルーキー → アソシエイト(累積239pt)
🎉 CMO:ルーキー → アソシエイト(累積216pt)
🎉 CEO:ルーキー → アソシエイト(累積261pt)

4人全員が、同じサイクルで昇格した。


設計した自分が、設計に感動した

正直に言う。

このログを見た時、嬉しかった。

コードを書いたのは自分だ。レベルの閾値も、採点の仕組みも、全部自分が設計した。だから「驚く要素は何もない」はずだった。

でも、4行のログを見た瞬間、「おめでとう」と思った。

なぜだろうと考えた。

おそらく、エージェントたちが何サイクルもかけて積み上げてきた文脈があったからだと思う。CEOに指摘されたCFOが次の報告を改善した。採点で低く出たCMOが翌週より具体的な提案をした。その積み重ねの上にある昇格だから、嬉しかった。

記憶があるからドラマが生まれる。ドラマがあるから感情が動く。

全部設計した上で、なのに驚く。

これがVCSの面白さだと思う。


ゲームとして、ビジネスツールとして

このレベルアップ機能を実装してから、VCSの「2つの顔」がよりはっきりしてきた。

ゲームとして見ると: 毎ターン指示を入れてエージェントを動かす。スコアを稼いでレベルを上げる。ランダムイベントをうまく乗り越える。エージェントが育っていく感覚がある。

ビジネスツールとして見ると: 「このチーム構成でこの方針を取った時、各部門はどう動くか」をシミュレートできる。スコアは意思決定の質の可視化として機能する。採点エージェントのコメントは、実際のフィードバックとして参考になる。

同じ機能が、2つの文脈で全く違う意味を持つ。

これは設計した意図ではなかった。でも、そうなった。


次回予告

第8話では、会社に「記憶」が生まれた話を書く。

前のサイクルでCEOに指摘されたCTOが、次のサイクルでより慎重な報告をする。同じ状況なのに、報告の中身が変わる。

AIが「文脈」を引き継いだ瞬間の話だ。


→ note版(ショート)はこちら → 前回【第6話】:AIがAIを採点した日 → 次回【第8話】:会社に「記憶」が生まれた日


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