はじめに
これは、AIエージェントに会社を経営させるプラットフォーム「Virtual Company Studio(VCS)」を作っている記録だ。
完成品の話ではない。作りながら書いている。失敗も、気づきも、そのまま書く。
プロジェクトXのように、後から美化された話ではなく、今まさに起きていることを記録するシリーズだ。
きっかけ:AI Agent Builderを作っていた
VCSを作り始める前、私は別のツールを開発していた。
AI Agent Builder。ノードをドラッグ&ドロップして、AIエージェントの処理フローを視覚的に設計できるツールだ。Google Apps Script(GAS)とClaude APIをベースにした、社内業務の自動化を目的としたものだった。

ノードA(データ取得)→ ノードB(AI処理)→ ノードC(メール送信)
こういった流れを、コードを書かずに組み立てられる。福祉・医療の現場でも使えるシンプルさを目指していた。
開発は順調だった。ビジュアルUIも完成し、エージェントの実行エンジンも動いた。
でもある日、画面を眺めながら、ふと違和感を覚えた。
転換点:「このノード、人間じゃないか?」
AI Agent Builderの画面には、ノードとノードが矢印でつながっている。
情報が流れる。判断が生まれる。次のノードへ渡る。
その時、唐突に気づいた。
これ、会社の組織図と同じだ。
CEOが判断して、CFOに指示を出す。CFOが数字をまとめて、CMOに予算感を渡す。CTOが技術的な可否を判断して、CEOに報告する。
ノード=人間。矢印=報告・指示ライン。
AI Agent Builderで作っていたのは、タスクの自動化フローではなく、組織そのものだったのかもしれない。
この気づきが、全ての起点になった。
「エージェント」から「会社」へ
AI Agent Builderは汎用ツールだった。
何にでも使えるが、何に使うかが曖昧だった。「エージェントを設計するツール」と言っても、ピンとくる人は少ない。
でも「会社を動かすツール」と言えば、誰でもイメージできる。
「会社」というフレームを当てはめた途端、全てが具体的になった。
- ノードに名前がつく → CEO、CFO、CTO、CMO
- 役割が決まる → 財務、技術、マーケティング、経営判断
- 報告ラインが決まる → 各部門がCEOへ週次報告
- 判断基準が決まる → 売上、コスト、進捗、リスク
「このエージェントは何をするか」という抽象的な問いが、「このCFOは今週何を報告するか」という具体的な問いに変わった。
ずっとわかりやすい。ずっとリアルだ。
Virtual Company Studio(VCS)の構想
こうして生まれたのが、Virtual Company Studio(VCS)だ。
コンセプト
AIエージェントが会社を動かす。人間はオーナーとして方針を決めるだけ。
毎週(サイクルごとに)、各エージェントが動く。
- CFOが財務状況を分析し、報告書を生成する
- CTOが技術進捗を確認し、リスクを報告する
- CMOがマーケティング状況を分析し、提案を出す
- CEOが全員の報告を受け、意思決定をする
人間(オーナー)は「来月の資金調達に向けて数字を整えてください」といった指示を一行入れるだけ。あとはAIたちが動く。
2つの使い方
ビジネスツールとして スタートアップ創業者やコンサルタントが、会社の意思決定プロセスをシミュレートする。「このメンバー構成でこの方針を取ったらどうなるか」を試せる。
ゲームとして 会社経営シミュレーションゲームとして遊べる。サイクルごとに状況が変わり、エージェントのスコアが上下し、予算超過や遅延などのイベントが発生する。人間が介入して結果を変えられる。
技術スタック
現時点での構成はシンプルだ。
- バックエンド:Google Apps Script(GAS)
- AI:Claude API(claude-sonnet-4-6)
- DB:Google スプレッドシート
- フロントエンド:GAS WebApp(HTML/CSS/JS)
- バージョン管理:GitHub
なぜGASか。
福祉・医療の現場でも使えるツールを目指しているため、導入障壁を極力下げたい。Googleアカウントさえあれば動く環境を優先した。また、私自身がGASでの開発に慣れており、プロトタイプを素早く作れる強みがある。
今日時点での進捗
記事を書いている今、以下が動いている。
✅ GitHubリポジトリ作成・フォルダ構成
✅ Claude API動作確認
✅ 4エージェント連携(CFO→CTO→CMO→CEO)
✅ スプレッドシートへの自動記録
✅ 複数サイクル連続実行
✅ Human-in-the-loop(人間の指示を反映)
✅ WebUI完成(ブラウザから操作可能)
実際に動いている様子はこんな感じだ。
=== VCS サイクル開始 ===
--- CFO報告 ---
【今週の財務報告】
売上:420万円/支出:180万円/純利益:240万円と堅調。
広告費が予算超過しており、早急な見直しが必要。
--- CEO判断 ---
【CEO判断】承認
営業利益240万円と堅調だが、広告費超過は放置すると
収益構造を毀損するリスクがある。CFO提案のROI低施策の
即時停止は妥当。来週中にROI計測データを共有し、
上位施策へ予算を集約。効果検証後に再配分を判断する。
たった数十行のコードで、AIが会社の会議を再現している。
次回予告
第2話では、環境構築の話を書く。
GitHubを初めてスマホで操作した話、「何をやっているのかわからない」という感覚のまま進んだ話、そしてリポジトリが完成した瞬間の話だ。
技術的なことが全くわからなくても読める内容にする。
→ note版(ショート)はこちら
→ 次回【第2話】:GitHubが最初の壁だった話
Virtual Company Studio 開発日誌 #1
2026年2月
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