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医療福祉 週刊トレンドレポート (2025年11月24日〜11月30日)

今週は、2026年度診療報酬改定に向けた議論が年末の山場を迎え、財政制度等審議会からの厳しい提言に対し、医療・介護団体が強く反発する構図が鮮明となりました。また、季節性の感染症流行や、年末調整シーズンに伴う「年収の壁」と働き控えの問題なども現場の関心事となっています。


医療分野 TOP5

1. 財政審、診療所報酬の「適正化」を提言

財務省の財政制度等審議会は11月26日、2026年度診療報酬改定に向けた建議を行いました。その中で、診療所の利益率が病院に比べて高い水準にあるとし、診療所の報酬単価(初診料・再診料など)の引き下げや、リフィル処方箋のさらなる普及による薬剤費抑制を求めました。これに対し、日本医師会などは「物価高騰や賃上げ原資の確保が必要」として強く反発しており、攻防が激化しています。

2. インフルエンザ、全国的な「注意報」レベルへ

国立感染症研究所の発表によると、インフルエンザの定点当たり報告数が急増し、全国的に「注意報」レベルに近づいています。例年より早い流行拡大に加え、マイコプラズマ肺炎も高止まりしており、発熱外来の逼迫が懸念されています。一部地域では学級閉鎖も相次いでおり、医療機関では感染対策の再徹底とワクチン接種の駆け込み需要への対応に追われています。

3. 医師の働き方改革、施行1年半の実態調査

2024年4月に施行された「医師の働き方改革」から1年半が経過し、厚生労働省が実施した実態調査の中間報告が話題となっています。時間外労働の上限規制はおおむね遵守されているものの、地方病院や救急医療現場では、宿日直許可の取得や医師確保に依然として苦慮している実態が浮き彫りになりました。タスクシフト・シェアの推進が改めて叫ばれています。

4. マイナ保険証、利用率向上のための追加策検討

12月2日の「現行の健康保険証発行終了から1年」を目前に控え、政府はマイナ保険証の利用率向上に向けた追加策の検討に入りました。医療機関への支援金や、患者へのメリット周知強化などが挙がっていますが、現場からはシステムトラブル時の対応負担などを懸念する声も根強く、実効性のある対策が求められています。

5. 医薬品供給不足、長期化で現場の疲弊続く

ジェネリック医薬品を中心とした供給不安定な状況が依然として解消されていません。咳止めや去痰薬、抗生物質など、冬場の感染症流行期に不可欠な薬剤の入手困難が続いており、薬局や医療機関では在庫確保と代替薬の調整に多大な労力を割いています。国による抜本的な構造改革を求める声が高まっています。


介護分野 TOP5

1. 財務省、利用者負担「原則2割」を再度提言

財政制度等審議会は、介護保険制度の持続可能性確保の観点から、現在は所得に応じて「1割〜3割」となっている利用者負担について、「原則2割」への引き上げや、ケアプラン作成の有料化(利用者負担導入)を再度提言しました。介護関係団体や利用者団体からは「利用控えや重度化を招く」として反対意見が噴出しており、次期制度改正に向けた最大の火種となっています。

2. 介護事業者の倒産、過去最多ペースで推移

東京商工リサーチなどの調査によると、2025年の介護事業者の倒産件数が、11月時点で過去最多を更新するペースで推移しています。主な要因は、深刻な人手不足、物価高騰による光熱費・食材費の上昇、および競争激化です。特に小規模な訪問介護事業所の撤退が目立ち、地域におけるサービス提供基盤の維持が危ぶまれています。

3. 介護現場での「生産性向上」取り組み事例発表

厚生労働省主催の「介護現場の生産性向上推進フォーラム」が開催され、見守りセンサーや介護ロボット、ICTを効果的に活用した先進事例が共有されました。成功事例では、機器導入だけでなく、業務フローの見直しや職員の意識改革をセットで行う重要性が強調され、多くの事業所にとって具体的なヒントとなりました。

4. ノロウイルスなど感染性胃腸炎が増加傾向

冬の到来とともに、高齢者施設においてノロウイルスなどの感染性胃腸炎の発生報告が増加しています。施設内での集団感染を防ぐため、吐物処理のシミュレーション訓練の実施や、面会者への手洗い・消毒の徹底呼びかけなど、警戒レベルが引き上げられています。

5. 年末調整シーズン、「年収の壁」対策の活用

年末調整の時期を迎え、パート職員の就業調整(いわゆる「年収の壁」による働き控え)が課題となっています。政府の「年収の壁・支援強化パッケージ」を活用し、手取り収入が減少しないよう手当を支給する事業所も増えていますが、制度の複雑さや事務負担の重さに対する戸惑いの声も聞かれます。


障がい福祉分野 TOP5

1. 障害者雇用状況報告、法定雇用率達成企業の割合に関心

例年この時期に公表される障害者雇用状況の集計結果に関心が集まっています。法定雇用率が段階的に引き上げられる中、企業における実雇用率の推移や、精神障がい者の定着状況が注目ポイントです。特に中小企業における雇用拡大がどの程度進んでいるかが、今後の支援策を占う試金石となります。

2. 就労選択支援、地域の支援体制格差が課題に

10月に開始された「就労選択支援」について、運用開始から約2ヶ月が経過し、地域による実施体制の格差が浮き彫りになりつつあります。アセスメントを実施できる事業所が不足している地域や、関係機関との連携がスムーズに進んでいない事例も報告されており、広域的な支援体制の整備が急務となっています。

3. グループホームの消防・防災対策強化

これからの乾燥する季節を前に、障害者グループホーム等の消防・防災対策への指導が強化されています。過去の火災事故の教訓を踏まえ、スプリンクラーの設置状況の確認や、夜間を想定した避難訓練の実施徹底が求められています。

4. 「親なきあと」を見据えた地域生活支援拠点

障がいのある人の高齢化と「親なきあと」の問題に対応するため、地域生活支援拠点の整備と機能強化が議論されています。緊急時の受け入れ体制や、地域全体で見守るネットワーク構築の好事例が紹介され、各自治体での取り組み加速が期待されています。

5. 障害者週間(12/3〜9)に向けた啓発活動

12月3日から始まる「障害者週間」に向け、各地でイベントや啓発活動の準備が進んでいます。障害者アート展やパラスポーツ体験会など、障がいへの理解