「申し送りノート、多すぎてどれが最新かわからない」
「“誰かやっといて” の“誰か”が、いつまでも現れない」
介護施設あるあるですよね。
派手なシステムを入れなくても、Google Workspace とスマホさえあれば、
申し送りとタスク管理をもう少し“マシ”にすることはできます。
この記事では、
✅ Google Keep(メモ)
✅ Google To-Do(タスク)
この2つだけを使った、介護施設向けの「申し送り&タスク管理 Ver.1」 をまとめます。
いきなり完璧を目指さず、まずはここからの「土台」としてどうぞ。
1. コンセプトはただ1つ
「記録」と「行動」を分ける
まず大前提として、こう割り切ります。
- Google Keep = 記録・様子・経過を書くところ
- Google To-Do = 誰が・何を・いつまでに やるかを書くところ
紙の申し送りノートでは、
「情報」と「やること」がごっちゃになりがちです。
・Aさん、ふらつき強い。バイタル再確認必要?
・Bさん、排泄パターン変わっている。様子見。
・Cさん、新薬開始。副作用チェック要。
こういうのが、
ノートの中でフワッと流れて消える のが一番危ない。
だから、
- 様子・背景・気づき → ぜんぶ Keep に書く
- その中から
「やったか・やってないかがハッキリした方がいいもの」だけ → To-Do にする
というルールにします。
2. 申し送りは Google Keep に一本化する
◆ シフトごとに1枚のKeepメモ
紙のノートをそのままデジタル化するイメージで、
シフトごと・ユニットごとに1つのメモ を作ります。
タイトルの例
【ひまわり特養】2F北 日勤申し送り(2025-11-28)
【ひまわり特養】3F南 夜勤申し送り(2025-11-28)
本文の型(テンプレ)
■ シフト情報
・日付:2025-11-28
・シフト:日勤(9:00〜18:00)
・担当:山田、佐藤
■ 全体の様子
・全体の雰囲気:
・事故・転倒・ヒヤリ:
・感染症状の有無:
・水分・排泄・食事の傾向:
■ 入居者ごとの気になる点(必要な方だけ)
【Aさん】
・朝の様子:
・食事量/形態の変更:
・排泄状況:
・ADLの変化:
・言動・表情の変化:
・薬の飲み忘れ/変更:
【Bさん】
(必要な人だけ)
■ 次シフトへの共有ポイント
・Aさん:午前中の見守り強化
・Bさん:排泄誘導の時間帯を変更して様子見
■ To-Do候補(やった/やってないがハッキリした方がいいもの)
・Aさんのふらつき増加→看護に報告して評価依頼
・Bさん排泄状況→3日分まとめて記録シートに転記
・Cさん新薬→日勤チームで副作用(ふらつき・眠気)観察
ここまでは、
「いつも紙に書いている内容を、場所だけKeepに変えた」だけ です。
ポイントは最後のブロック、
「To-Do候補」 の欄を作ること。
現場職員は、
「これは誰かがちゃんとやった方がいいな」
と思うものを、ここに箇条書きするだけでOKです。
この段階では、まだ To-Do に登録しなくて大丈夫。
3. To-Doは「リーダーが成形する」くらいでちょうどいい
To-Doを現場全員に自由に作らせると、
あっという間にカオスになります(笑)
なので Ver.1 では、こうします。
◆ 役割分担
- シフト職員
- Keep に申し送りを書く
- 「To-Do候補」に“タスクにした方がいいこと”を箇条書きする
- ユニットリーダー/フロアリーダー
- 各シフトの Keep を見て
→ 本当にタスクにすべきものだけを Google To-Do に登録する - 区分・担当・期限を整理する
- 各シフトの Keep を見て
- 看護・ケアマネ・相談員など
- 自分の担当To-Doリストを見て、実行&完了チェック
こうすると、
「現場は書くところまで」
「整理してタスク化するのはリーダー」
と分業できて、
操作が増えて嫌がられる問題 をかなり減らせます。
4. Google To-Do の“揃えるべきルール”は1つだけ
To-Doは、書き方を揃えるだけで使い勝手が一気に変わります。
◆ リストの例
まずはこれくらいで十分です。
【ひまわり特養】共通タスク
【ひまわり特養】2F北 介護タスク
【ひまわり特養】看護・医療タスク
【ひまわり特養】ケアマネ・相談タスク
将来、Flowsやスプレッドシートと連携する時にも、この区切りが効いてきます。
◆ タスク名のフォーマット
ここが一番大事。
【区分】内容(対象者)→ 締切
例)
【介護】Aさん排泄状況を3日分まとめて記録シートへ入力 → 11/30
【看護】Aさんふらつき増加を主治医へ情報提供(受診時) → 12/02
【ケアマネ】Bさん家族と今後の方針を電話で調整 → 11/29
【相談】Cさんショート利用の候補日を家族と調整 → 12/05
【区分】の例
- 【介護】
- 【看護】
- 【ケアマネ】
- 【相談】
- 【リハ】
- 【サ担】
区分をつけておくと、
- 後から「看護だけ見たい」「介護だけ見たい」ときに探しやすい
- 将来的に、自動集計や自動振り分けのフック にもなる
というメリットがあります。
5. 1日の流れはこうなる(イメージ)
文字だけだとピンと来ないので、
ざっくり「1日の動き」を並べてみます。
◆ 早番
- 前夜勤の Keep 申し送りをざっと確認
- 自分のシフト用に Keep ノートを作成(テンプレをコピペ)
- シフト中の気づき・変化を Keep に追記
- シフト終わりに「To-Do候補」を書き出しておく
◆ 日勤リーダー
- 早番・夜勤の申し送り(Keep)を確認
- 「To-Do候補」欄を見て、
→ 本当に必要なものを To-Do に登録 - 期限や担当を設定する
◆ 日勤・遅番・夜勤
- 自分の担当リスト(介護・看護・ケアマネなど)を開く
- 今日やるタスクをこなし、終わったら チェックを付けるだけ
6. 最低限、みんなで守るルールはこれだけ
最後に、事務室や職員ルームに貼れるレベルで、
ルールを4行にまとめると こうなります。
● 申し送りは紙ではなく Google Keep に書く。
● 「To-Do候補」はシフト職員が Keep の最後に書く。
● 実際の To-Do 登録はリーダーが行う。
● To-Do は【区分】内容(対象者)→ 締切 の形で書く。
これだけでも、
- 「あれ、誰がやるんだっけ?」が減る
- 「やるべきことが申し送りノートの中で迷子になる」のを防げる
- 申し送りとタスクの 見える化 が一気に進む
という、小さくて地味だけど、確実な前進 になります。
おわりに:これはDXじゃなくて「書く場所をちゃんと決めるだけ」
今回の Ver.1 は、
AIもカスタムアプリも使っていません。
やっていることは、
- 書く場所を「Keep」にまとめる
- 「やること」だけ「To-Do」に分ける
- リーダーがタスク化を引き受ける
ただそれだけです。
巷にはDXと称して「デジタル化」「音声入力」「AI要約」が氾濫していますが、残念ながら、それはDXではありません。ただのデジタライゼーションです。
